佐賀県肝癌対医会研修会(R8年度第1回) 2026/9/26
肝癌診療に超音波をどう活かすか 診断から治療まで
久留米大学医学部消化器内科 黒松亭子教授
昨日は肝癌対策研修会に参加してきました。最初に会長の平井先生から佐賀県が7年ぶりに肝癌死亡率日本一になったという不名誉な報告とともに、今後も開業医も肝がんの早期発見に寄与する必要性を述べられました。次に私の出身医局の先輩の黒松亭子先生のご講演でした。
前半は我々実地医家が今後どのようにして肝がんの早期発見に努めるべきか、後半は肝癌診断の最前線のお話でした。以下前半部分の要約を記します。
従来脂肪肝といわれていたものの多くが、現在MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という概念に置き換えられおり、以下MASLDとして記載します
現在肝癌の発生母地としては従来多かったウイルス性肝炎(HBV.HCV)由来より非ウイルス性肝疾患が多く、その中身はMASLDやアルコール性であるということ。
とくにMASLDに関しては繊維化が進むと肝がん発生率が高まるので
繊維化のfollow upが必要で、繊維化があれば6ヵ月ごとの腹部超音波検査
繊維化の指標としてはfib4 1.3/2.67を、フィブロスキャンなどの肝臓の硬さを測定できる機器での検査も推奨されました(ガイドラインより)。しかし繊維化の乏しいMASLDのfollow up方針はまだ確立していない。
一方非肝硬変での肝がんは従来B型肝炎が多かったが、現在はMASLDがもっとも多い。
MASLDは本邦で20000万人(人口の25%)
とくにご高齢、生活習慣病あり、男性、肥満、アルコール歴のあるptは腹部超音波検査が必要である。近年肥満のないMASLDとしてLean-MASLDという概念が2023年に提唱されている。
Lean MASLD (BMI <23) MASLDの20%で遺伝的素因
体重が標準(BMI正常)でも脂肪肝と代謝異常を発症している状態で『やせ型脂肪肝』
『隠れ脂肪肝』とも呼ばれる。
原因と特徴
・隠れ肥満・筋肉不足
BMIが正常でも内臓脂肪が多く蓄積 or筋肉量が少ない(サルコペニア)場合
・遺伝的素因 PNPLA3の遺伝子変異などにより肝臓に脂肪がたまりやすい人が30%
・食生活の乱れ:極端な糖質制限、急激なダイエットによる低栄養、果糖(砂糖・甘い飲み物)
や炭水化物の過剰摂取
・他のMASLDとの違い
糖尿病の合併20% (40%)➡しかし後年DMになってくる人もいる
定期の腹部超音波検査で肝癌結節を見つけるには
MASLDの特徴を知る。
・AST/ALTが正常閾、軽度上昇が多い
・血小板の低下が少ない
・MASLDの20%はLean MASLD
➡腹痛や上腹部違和感ではとりあえず腹部超音波検査
➡HTなど生活習慣病で定期通院の患者さんをピックアップ
➡腹部超音波検査で脂肪肝陰性でもその後脂肪肝になることあり
➡腹部超音波検査で脂肪肝があればfib4を(逆ではない)
一方MASLDの方は肥満などで腹部超音波検査で詳細な検討が困難な方が多い。
過去のCT歴があれば肝臓の形態を確認すること(左葉が小さく胃のガスで見えないこと、逆に左葉が大きすぎて左季肋部操作が大事なこともある)も重要。
AFP<10 だけど大学ではAFP<7としてそれを越える場合は画像検査を行っている。MASLDの肝がんではAFPは低いことが多く、PIVKA-IIも併用すること。


