8/26のプライマリ研究会にて、糖尿病(食事運動療法の実際と最適な薬物療法)の講演を聞いてきました。演者は福岡で多数の糖尿病の患者さんを外来で診ている二田哲博クリニック(姪浜)院長の下野大先生でした。とても勉強になるご講演でした。以下私なりの記録です。
2009年 DPP4、 2014年SGLT2という新しい糖尿病治療薬が発売された。現在3500名の糖尿病患者を外来で診療している。 2013年以降は平均HbA1c 7%程度。夏と冬では0.2~0.3%の差がある。夏は運動療法ができるので低い
2009年以来DPP4は徐々に使用頻度が高くなり、現在は7割のDMの患者さんに使われるようになっているし、ファーストチョイスとして処方される頻度も高くなっている。
なぜDPP4が日本人に使われるのか?欧米人と日本人ではインスリン分泌の形態に違いがあることが指摘されている。75gOGTTの試験でブドウ糖負荷でインスリンがどのように出るかを見てみると、欧米人は正常/耐糖能異常/DMは、インスリン値が耐糖能異常では更新し、それがおいつかなくなった状態がDMであるのに対して、日本人ではインスリン値が正常→低下→さらに低下してDMになるという結果がある。この為インスリン分泌をよくするお薬が日本人には効きやすいということになる。
インスリン分泌に関して
DPP4は血糖値が高いとインスリンを出す、低いときにはインスリンをださない
しかしSU/グリ二ド併用は低血糖をきたす可能性はある。
DMのPtは高齢者が増えており、7割は65歳以上である。高齢者では低血糖をきたしてはいけない。DPP4は低血糖をきたさないのは大きなメリットである。
自殺企図でDPP4であるシタグリプチン 1700mg(常用量の17倍)を内服しても意識障害、低血糖(–)、血中のIRIも過剰分泌はきたさなかったという症例報告がある。
神戸中央市民病院で救急受け入れで、重症低血糖の救急は平均75歳、SU>>インスリンkの原因が多い。SUは低血糖に注意が必要
ではDPP4に欠点はないのか?
DPP4はほとんど低血糖をきたさないが、途中で効果が減弱することがある。開始して半年で改善したHBA1cの半分以上が戻ったのを再上昇と定義すると、3人に1人が半年を境にわるくなっている。糖尿病協会で大きな規模でみてみるとHbA1c 0.4%以上あがったのは4人に1人。つまり3人~4人に1人が再上昇をきたす。どういう人が再上昇をきたすのか。トランスが上がる傾向がある。DMではNASH、薬物副作用で肝機能をみると、インスリン抵抗性のHOMA-Rと肝機能が挙がる傾向がある。
不摂生でDPP4のインクレチンの効果が低下する(短期間でも)。
インクレチンのインスリンの反応が不摂生によって低下することが考えられている。
食事運動療法
運動とインクレチン
マウスをトレッドミルで走らせると、IL6が挙がり、GLP1の濃度↑、
膵臓のα細胞はプログルカゴン→グルカゴンがプログルカゴン→GLP1を作るようになり、インクレチンの効果↑、グルカゴン↓、インクレチン効果でインスリン分泌↑つまり運動とインクレチンは相性がよい。
DMの治療が進歩したので、生活習慣の見直しをしなくてもコントロールができるのか?
薬物療法が進歩したが(内服7、注射2種類と薬は増えている)、そのベースには生活習慣の見直しは必須
運動食事療法に関して
専門医療機関(DM)の患者のアンケート調査では半数しか運動していない。
運動効果は多岐にわたる。血糖改善、サルコペニアの予防、骨粗鬆の予防にもなる。
患者さんは短期的には運動は頑張るが、長期に続かないので、血糖改善だけではなく、寝たきり予防、大腸がん、骨折が減るという啓もうをしている。
運動に関しては
有酸素運動でもレジスタンス運動どちらでも効果はある。どちらもHbA1c 0.5~1%下がる。しいていえば有酸素運動+レジスタンス運動がHbA1c、 体重が最も下がる。
Walking(継続率最も高い有酸素運動)の前後にレジスタンス運動(スクワット等)を入れるのも一つの方法
運動の多目的効果について
運動(1年間)→HbA1cはだいたい3か月でしっかりと低下し、そのあとはどんどん下がるわけではない、運動でそれを維持する。
HbA1cは0.5~1%しか下がらない。しかし運動によって高血圧の患者さんは収縮期/拡張期も20mmHg程度下げる。脂質はコレステロールは20、TGは1年で40程度下がる。
870人の2型DMのPtに5つの危険因子で動脈硬化が進むのか
男性、タバコ、HT、脂質が高い、虚血性心疾患の既往の5つのパラメータの重なりをみてみると、危険因子が多いほど動脈硬化が進むことが確認されている。
運動は血糖以外への効果があるので、運動は積極的に進めるべきである。
サルコペニア
握力と予後の関係
握力が1Kg増えるごとに男は死亡率10%下がる、心血管イベント全体で10%低下、入院率が明らかに下がる
握力男/女 26/18Kgがカットオフ:サルコペニアの診断基準
これをきっていなければサルコペニアではない。
握力低下があれば、骨格筋の測定、骨塩定量が低下していればサルコペニア
サルコペニアの予防には
有酸素運動、レジスタンスでも改善する。両方やった方がよい。この2つにバランス運動を加える
片足立ち(バランス運動)
立ち座り→バランス運動→有酸素運動→立ち座り→バランス運動がよい
Walkingはどうしたら続くのか。
歩数計をもつだけで2500歩は上がる。
生活活動量は通常2000~4000歩程度。
歩くのが無理の方でも歩かなくても立っているだけでも改善あり。2型糖尿病の患者さんには30分毎に5分立ち上がるだけで血糖改善効果はある。
スポーツができるほど元気なかた。どのレジャーがいいのか
テニス>バトミントン>サッカー
仲間と一緒に運動がよい。
食事
タンパク質をとらなければ筋肉がつかない。実際どの程度必要か?
総エネルギーの15%を蛋白質でとること
1g/単位体重以上とるのがよい。とくにロイシンがよい。ロイシンは乳蛋白、鶏ささみに多く含まれる。
今後BMI 22を撤廃する予定。目標体重になる。
目標体重高齢者では22にしても寿命がのびない、22~25を
若い人の野菜摂取量が低く6割程度しか摂取していない。
糖尿病の患者さんには歯周病は合併症として認知されていない。歯周病で野菜、こんにゃくが食べれなくなり→血糖コントロールがさらに悪くなる。野菜をたくさんとると歯周病が減る。
食事運動療法では頭でっかちではうまくいかない
運動療法指導する医療スタッフでも
週2回以上30分以上の運動(習慣的運動)を実践しているのは3割程度。知っているだけではやらない。
食事運動療法を積極する必要性があるのは当然だが、
運動指導は食事指導に比べて指導が少ない。保険点数がないのも原因の一つか。
運動が楽しいと思う人、運動指導を外来診察6回に1回程度医師が指導している人(半年に1回)に運動が続いている。医師による声かけは必要。
一般内科にも糖尿病の患者さんは受診されます。7人に1人が糖尿病の時代ですから当たり前ですね。しかし医師は安易に薬を処方するのではなく、まずは食事運動療法の指導が基本。内服薬としてはDPP4が日本人は合っているお薬で、副作用も少なく、処方しやすいことがよく理解できました。しかしそれでもHbA1cの下がりは誰にでも期待されるのではなく、効果が減弱する方々がおられること。やはりベースは食事、運動療法であることを再度銘記しました。明日からの外来診療に役立てます。まずは自分の食事運動療法からですが…。