第154回胃癌・大腸癌検診医研修会に参加してきました。今回の
特別講演 は『ピロリ感染からみる胃がん検診:内視鏡検査を中心に』というタイトルで
国立国際医療研究センター国府台病院名誉院長 上村直実先生のご講演がありました。
私なりにお教えいただいたことをまとめてみました。
ピロリ菌感染(–)では胃がん発生は少なくピロリ感染(+)で10年間で5%の発がん
があるという報告を境にピロリ菌感染の有無を意識しての内視鏡検査が現在求められるとのお話でした。
胃がんの病態や対応
① 胃がんを分化型、未分化型で分類するだけではなく胃がんの悪性度や浸潤速度による分類した検討が必要
② 単一な高分化型腺がん(tub1)と中分化腺がん(tub2)が混在する胃がんは明確に区別すること
③ 未分化型胃がんを画一に分類してはいけない
④ 純粋な印鑑細胞がん(pure-sig)と低分化型腺がん(por)が混在したもの(por-sig)を明確に区別すること
⑤ 病理の組織分類を基本として臨床的な胃がん分類法の確立を臨床研究が必要
早期胃がんを見逃す主な原因と対策
・病変が撮影されているが、診断されていない→診断能力の向上、早期がんを数多く見る
・病変部位は撮影されているが、病変の認識がない
→撮影条件に注意+注意深い観察センスが必要
・病変部位の撮影がされていない
→手技の未熟さ、くまなく観察する方法を学ぶ
見逃しの少ない写真の撮り方は各人の努力が必須である。
観察方法
・ECJから十二指腸球部に到達するまでに感染動態を把握する
(未感染、感染、既感染)
・病変があってもルーチンの撮影手順を変えない。詳細観察は最後に行う
・場所に注意した観察を(とくに体下部後壁は空気量の少ない状態で)
①食道:胃吻合部がん
・通常観察では見えにくい。早期により病変が明確、反転の際には近視が重要
特徴
・ほとんどが分化型腺がん
・隆起型・混合型で浸潤癌が多い
・右側とくに0-3時方向に病変が認められることが多い
一度は深吸気下で観察することが大切
②胃底腺型胃がん
・胃底腺由来、免疫染色でペプシノーゲン陽性、肉眼的には上皮性腫瘍の形態に乏しい
・粘膜下腫瘍様、粘膜表面の変化に乏しく毛細血管の拡張所見を有する例が多い
・IPMNの責任遺伝子変異であるGNASのmutationを認めるケースが多い
内視鏡像
1:粘膜下腫瘍様病変
2:拡張した樹枝状の血管
3:黒褐色の点状・斑状の色素沈着
4:病理診断は生検診断精度が低い為内視鏡医から胃底腺型胃がんの疑いが必要
③胃底腺領域の腺窩上皮型胃がんの特徴
・体部胃底腺領域の発赤調の過形成ポリープ用隆起、または白色~同色調隆起
・乳頭状ないし柔毛状の異型腺管造成を認め胃型の粘液形質を有する
・NBI併用拡大観察では、不均一な大型の非開口型の粘膜微細構造を呈する
未感染粘膜にそぐわない過形成ポリープ様病変に注意
とても勉強になるお話でした。毎回この研修会には参加しておりますが、いつも勉強になり、検診医会会長の藤本一眞先生を始めとして関係各位の方々には感謝しています。勉強したことを糧に少しでも佐賀県の胃がん大腸がんでお亡くなりなる方を減らせるように微力ながら貢献できればと思います。