2018/3/22に佐賀大学感染制御部部長の青木洋介先生のご講演を拝聴しました。この会は開業医向けということもあり、『外来診療に必要な抗菌薬の要諦整理』というものでとても興味のあるものでした。薬剤耐性に起因する死亡者は世界で2013年には年間70万人、何も対策を取らない場合、2050年には1000万人が死亡し癌による死亡者数を超過するとも言われています。私たちかかりつけ医が薬剤耐性をつくらないように、外来での抗生剤処方をきちんと学んでおく必要があると思います。
今回お教えいただいたこと
風邪症候群
・普通感冒:嚥下時違和感、喉の奥の乾燥感
・気管支炎:咳がでるのは気管支が主体
・副鼻腔炎:最初はウイルス、1週間続く場合に細菌性を考える
・咽頭炎:溶連菌
Centor score
(咳がない、喉が痛い、発熱、前頚部リンパ節炎)
咳がないのは気管支炎ではない
溶連菌は咽頭のみ、EBは全身感染症なので、肝炎を起こす
ペニシリン系抗菌剤
耐性獲得している場合はオーグメンチン(サワシリン+クラブラン酸)
セフェム系
①世代:ケフレックス:95%吸収される 500mg 2g/日 UTI
⓶ケフラール:80%吸収される
③ セフゾン、メイアクト、フロモックス:15~20%しか吸収されない:処方する意味はないが、腸管には流れるので、耐性菌を作ることは考えられる。
UTIにはセ①世代を
肺炎の場合(肺炎球菌、インフルエンザ菌)にはセ⓶世代を、①世代は効果なし
クラビットの吸収率は100% 内服=div (胃のオペ後などは吸収落ちる)
市中肺炎
・声帯の上:溶連菌
・声帯の下:肺炎球菌、インフルエンザ菌
PEK ( プロテウス、Ecoli,クレブシエラ):1世代セフェムOK
胆嚢炎があればPEKを考えセファゾリン
UTIもあればPEKを考え、ケフレックスをまず使う。
第2世代は肺炎に使う。
基礎疾患のない気道感染症にはクラリス、ジスロマックは効果あり
ダラシンはPEK(肺炎球菌、大腸菌、クレブシエラ)には効かない
咽頭炎が主訴のときには
急性HIV感染症を忘れない。
HIV感染2.3週ででる全身のウイルス感染症
HIVは日和見感染症ではない。1か月で治り、5~10年でAIDS
急性HIV感染で見つければ1T内服で天寿まっとうする疾患
感染者の8割が急性HIV感染症状を呈する。
咽頭痛で後方病院へ送るポイント
開口障害(深部への炎症波及)、口蓋垂偏移のある咽頭炎
肺炎で痰がでるの膿のドレナージ効果、痰はばい菌を外に出すために必要(WBC)
DMでは痰が作れない。好中球の働きがないので、痰が作れず、局所に閉じ込めるようになり、フィブリンが来て膿瘍を作りやすい。そこに嫌気性菌が関与する。
嫌気性菌ではβラクタマーゼを出しているのがほとんどなので、βラクタマーゼ阻害剤含有抗菌剤がよい。
噛みきず
サワシリンよりオーグメンチン
猫、犬はβラクタマーゼはあまり出さない
猫は牙が鋭くて深い、牙の連鎖球菌、嫌気性菌は手根骨の深くまで感染
犬はあまり深くない
抗菌剤5日は必要(とくに猫)オーグメンチン
採血には必ず手袋をする
肺炎球菌、インフルザ菌、モラキセラ
市中肺炎、ユナシン(3g x2)、ロセフィン(1x) (ゾシン、メロペンは必要ないことが多い)
異型肺炎(肺以外に異常がある):マクロライド、ミノサイクリン
マイコプラズマ
60才以下、
全身感染症で、その一部として肺炎を呈する。時に咽頭痛が主訴のことあり
肺胸郭以外に異常があれば異型肺炎を考える。皮疹、肝機能異常、表在リンパ節蝕知
異型肺炎を考えればマクロライドを処方する。
画像では胸膜下は侵さない。気管支繊毛が好き:細気管支レベルを侵し、肺胞上皮細胞は侵さない
非定型肺炎の中に結核を入れておくこと
βラクタムが効かないとき、マクロライドにかえる場合は結核菌のチェックもする
非定型肺炎を疑う臨床像(マクロライドを使うべき肺炎)
・60歳未満
・基礎疾患がない
・頑固な咳嗽
・聴診所見が乏しい
・喀痰がない、
・WBC 10000未満
・肺胸郭外にも異常を認める
結核もこの範疇にはいることを忘れない。
尿路感染症
ケフレックス、培養を出すこと、バクタ(ST合剤)もよい
キノロン耐性大腸菌にはホスミシン、バクタ、ESBL(+)にはメロペン
市中肺炎と非定型肺炎の鑑別の重要性
非定型肺炎を疑う場合は結核も想起し、抗酸菌チェックもすること
咽頭炎の中に急性HIV感染が隠れている。
尿路感染症は大腸菌が多いが、キノロン耐性、ESBL産生菌がでている
必ず尿培養を出し、①世代セフェム(ケフレックス)、バクタ(ST合薬)がよい。
私自身の知識不足もあり、とりとめのないまとまりですが、勉強になりました。
とくに急性HIV感染のお話はインパクトがありました。また企画していただいた先生方に感謝です。