内視鏡学会セミナーに参加してきました。
18.1.21にJR博多シティアミュプラザで開催された内視鏡学会九州セミナーに参加してきました。朝9:00~16:10まで食道、胃、胆管、小腸、大腸の疾患について基礎的なことからトピックスまで幅広く網羅されたセミナーでした。消化器内視鏡医であれば是非知っておいて欲しいという会長及び演者の先生方の想いが伝わるようなセミナーで勉強になりました。とくに勉強になった点をいくつか記載します。
ヘリコバクターピロリ感染は一般の方々もよく知っている疾患で、当院でもよく抗体検査を行いますが、注意点について教えていただきました。
ヘリコバクターピロリ感染症
血清抗体価が陰性でも、値が高いものの中にはピロリの現感染、既感染が含まれる
・3~10U/mlでは22.6%の現感染、60.6%の既感染がみられたという報告がある。
・除菌による有意な胃がん抑制効果が確認されている。
・一方除菌後の胃癌は表面形態が判別し難くなることが多く、内視鏡観察には注意が必要。
次は下痢で大腸検査をすることは多いのですが、忘れてはいけない感染性腸炎のご講演があり、教科書的なことも含めて再度教えて頂きました。
感染性腸炎の内視鏡診断
・血性下痢、2週以上続く下痢、免疫不全や性行為感染症のハイリスク患者の下痢は感染性腸炎の鑑別が必要
カンピロバクター;回盲部から右側に炎症所見があることが多い。CTで腸管の漿膜まで炎症が波及することがあり、腹膜刺激症状あり、便スメアでらせん状のグラム陰性桿菌
サルモネラ、鶏卵、肉、ペット
カンピロに似て右側結腸に所見が多い。粘膜内の出血班。
UCとの鑑別が必要、サルモネラは直腸は侵されない。
白い健常粘膜の中に赤、経過は急性
UCは赤い粘膜の中に白い部分がある。経過は慢性
右側腸管壁の肥厚が特徴
エルシニア
クローンとの鑑別
縦走潰瘍は腸間膜付着測のクローンと一定性のないエルシニア
O-157
うろこような発赤、縦走潰瘍、腸管壁の肥厚、ときに重責を起こす
内視鏡で血便をみたら疑うべき
HUSをおこすので、病初期の短期間の抗生剤の投与が望まれるので、
早期にベロトキシン、O157の抗原キット 15分で判断できるので、有用
偽膜性腸炎CDI
ディフィシールは培養が難しい、酸素が嫌いな菌、酸素がすくない
R,Sに病変が多い。腸液でグラム陽性の桿菌がみられる。
CD toxin、 CD抗原チェックが簡単にできる
腸結核
輪状潰瘍、萎縮帯がある。新旧活動の病変が混在するのが特徴。少ない菌で腸管のリンパ組織の強い反応が起こる。
MAC腸炎
HIVなどの方に頑固な下痢、るい痩、があり、十二指腸下行脚がおかされる
クラミジア腸炎、直腸でいくら状の隆起、生検で確信が難しい。
組織をスライドでほぐして、産婦人科にあるクラミジア経管炎のキットを使うと陽性になる。クラミジア診断キットが有効
ウィップル(Whipple病)
HTLV1にでる
びまん性の白色柔毛が十二指腸に見られる。肥満細胞が充満している
アニサキス
SMT様に腫れる部位
アメーバ性大腸炎
介在粘膜は正常、たこいぼびらんから汚い白苔がでる。生検ではこの白苔部分も必要
糞線虫症(沖縄などに保虫者が多い)
高齢者がステロイド加療、手術後、原因不明のグラム陰性の菌血症、麻痺性イレウスをおこすことがあり。
12指腸の下降脚に白色絨毛→好酸球を伴う虫がある
大腸でも生検ででる。
クリプトスポリジウム症
若い人が下痢でどんどんやせる。HIVに見られる。
なにもひっかからない。培養も陰性、腸粘膜にも異常なしの場合に疑う
終末回腸:クリプトスポリジウム、便培養(ショトウこうばい遠心法)
サイトメガロウイルス(CMV)腸炎
血管内皮細胞が好きなんで、血管が支配している領域がズボットおちる
深掘れ潰瘍。組織では巨細胞封入体
ヘルペス食道炎
浅い潰瘍、小さな水泡→大きくなって破れて浅い潰瘍を形成する。
セミナーの準備をしていただきました関係各位の方々にお礼を申し上げます。勉強になりました。中島 裕