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第43回総合診療カンファランス

毎回参加させていただいている総合診療カンファランスに参加してきました。前半の症例検討では溶連菌性咽頭炎からの化膿性膝関節炎、wallenberg syn、AMA関連中耳炎というとても興味深い症例ばかりでした。

 

後半は佐賀大学耳鼻科の倉富勇一朗教授による頸部腫瘍の鑑別診断のお話でした。

以下自分の頭の整理の為に講演内容を記します。

 

頸部腫瘍としてとくにリンパ節腫脹が重要である。

 

首に腫瘤が腫れている患者さんが来た場合は

・まずこの腫瘤は頸部リンパ節腫脹なのか

・そうでなければ、耳下腺、顎下腺、甲状腺の腫瘍なのか。

・そのほかのまれな腫瘍なのか?

 

リンパ節の中で内深頸リンパ節(内経静脈周囲)が腫れているかどうかは極めて重要である。

 

リンパ節の腫れは?

内経静脈は下顎骨の内側に入るのでこの高さにでる

耳下腺は下顎骨の後ろ側にある組織なので、浅いところに腫瘍を作る。これをみたらリンパ節転移とは思わない。

 

リンパ節転移と鑑別すべき良性疾患

先天性嚢胞腫瘍

としては側頸嚢胞、正中頸嚢胞

・先天性側頸嚢胞(Max):好発年齢10~40歳、単発、薄い嚢胞壁、胸鎖乳突筋前縁に好発する(内頸静脈リンパ節の場所とは異なる)。

側頸嚢胞の鑑別に嚢胞性リンパ節転移を挙げる。原発巣としてはHPV関連中咽頭がんや甲状腺乳頭がんの転移

・正中頸嚢胞(甲状舌管)

この場所に転移をきたすものは少ない。まれにある。甲状舌管乳頭癌

・頸動脈小体腫瘍:頸動脈分岐部に発生。造影CTでよく染まる。

・神経鞘腫

首のいろんな交感神経からでてくる。交感神経は内頚動脈より深部にある。しばしば嚢胞性変化をきたす。良性なので、境界明瞭。神経を取り囲む細胞の腫瘍なので、最近は神経を残して剥離可能となってきている。

 

唾液腺腫瘍(8割が良性)。良性腫瘍の8割は多型腺腫そのほかはワルチン腫瘍

 

まずは多型腺腫かどうかを考える。悪性腫瘍の組織は術前には診断はできない。

 

ワルチン腫瘍は見た目が特徴的、つるんとした腫瘍

 

悪性腫瘍としては

・唾液腺導管がんがあり、高悪性度の癌で増加傾向

・顎下腺がん

顎下腺腫瘍の4割は悪性である。

 

頸部リンパ節腫脹の良悪性の鑑別は

疼痛、発熱、発赤→(+)良性を示唆する

硬さ、表面(平滑・境界)、可動性→硬く、表面不整、可動性不良は癌転移や悪性リンパ腫を考えるが、これらの鑑別の所見の中に、検査は入っていない。これは病歴と所見をきちんととれれば多くは鑑別できることを意味する。

結核はがんに近い。

Take home message

頸部腫瘍の鑑別では

・悪性腫瘍の早期診断が重要

・嚢胞性腫瘍にも悪性腫瘍があり、とくに中咽頭がん、甲状腺がんが嚢胞性リンパ節転移をきたすことがある。

・画像診断は造影することで充実部分の描出がでる。

・嚢胞性腫瘍の穿刺吸引では、細胞診とTG値の測定(甲状腺乳頭がんで高値)が重要

 

一般開業医の私のクリニックにも時に頸部リンパ節腫脹を主訴においでになる患者さんがおられます。私の経験した患者さんは良性で、ウイルス感染によるもと思われますが、鑑別する際に、悪性を疑うポイントを教えていただきとても勉強になりました。

2019年05月26日