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内科学会 in 名古屋②

今日は先日の名古屋で開催された内科学会で興味深く拝聴した診断プロセスの講演について書きます。

医師は一般に外来で、受診された患者さんのお話を聞き、患者さんの言葉を医療言語におきかえ、原因疾患を想起し、それを確定する診察や諸検査を行い確定したいと思っています。誤診をしたいとか、誤診をしても仕方がない思う医者などいるわけもありません。しかしシャーロックホームズやポアロや名探偵コナンのようにいつでも解決できるものでもありません。やはり失敗を繰り返して成長していくしかなく、それはどの職業でも同じだと思います。成長していく過程でなぜ失敗したのかということを自問自答します。今回はその診断という部分にフォーカスを当て、なぜ失敗するのかに関して第一線の先生たちのお話でした。またこの企画は佐賀大学感染制御部の青木教授が中心になって作られたことも楽しみにしていた理由の一つです。

東京都立多摩総合医療センター 綿貫 聡先生

①    診断プロセス総論:ピットフォールの背景因子

診断プロセスに10~15%に問題があると考えられている。

Diagnosis process error:診断が間違っている、見逃されている、遅れている。

全米医学の定義

頻度

・1年で5%の米国成人患者が経験

・マレーシアのプライマリケア診療所では有病率は3.6%

・全米アカデミーの報告書では生涯のうちにほぼすべての人が経験

 

まれな疾患や非定型的なプレゼンテーションではなく、ふりかえればなぜ間違えたのか?が多い

一般の経過:情報収集⇒情報統合⇒暫定診断⇒説明⇒follow upという経過を通る。

思考には2つあり

システム1:直観的思考、」システム2:分析的思考

 

システム1:直観的思考(潜在意識下で無意識に働く思考のショートカット)

・非典型例では診断プロセスに問題が生じやすい

・ショートカットを用いることで診断プロセスに生じるゆがみを認知バイアス

・無意識的なものであり、個人の努力のみで回避するのは難しい

システム2:分析手思考

・臓器別・病因別など、系統や手順に元ずいた診断

・様々なリソースで補助できる(語呂合わせ、ベイズの定理、アプリケーション、教科書

・短所としては時間がかかり、豊富な知識が必要となる。

 

 

実際はシステム1とシステム2をいったりきたりして診断している。

 

エラーの原因

状況要因、情報収集、情報統合それぞれがある。

 

利用可能バイアス

思い出しやすく、すぐに頭に浮かぶ疾患に囚われてしまう。

 

アンカリング(⚓)

最初に想起した疾患から離れらない。

 

確証バイアス

鑑別診断に都合の悪い情報を無視してしまう。

早期閉鎖

早々に考えることを辞めてしまう。

まとめ

・診断プロセスの問題は世界的な話題であり、日本においても同様の問題が存在している可能性がある

・診断プロセスの原因は認知心理的要因、特に情報統合の問題が最も大きな割合を占め状況要因が重なってくる

・無意識的なこれらの要因に対して、個人の努力のみで向き合うことには限界があり、組織的な対策が必要となる。

 

私自身においても、自分なりに患者さんの言葉から、想起した疾患が、そうだと思い込んでそれ以上思考を深めなかったことを反省した患者さんがおられました。いわゆる早期閉鎖です。まだまだ勉強が足りません。

2019年05月21日